膵臓疾患

膵臓の病気(膵炎・膵のう胞・膵臓がんなど)

膵臓は胃の背後にある20cmほどの細長い臓器で、右側で十二指腸とつながっています。膵臓の主な役割は、糖分、たんぱく質、脂肪などを分解して消化を助ける膵液の分泌と、糖質をエネルギーにかえる働きをコントロールするインスリンという物質を分泌することです。
膵臓の疾患の代表的なものとしては膵炎、膵のう胞、膵臓がんなどが挙げられます。これらの疾患の特徴については次項で説明しますが、膵臓は上記のように、消化や糖質コントロールという、食物の消化と代謝を維持するための大切な役割を果たしている臓器であるため、この機能を失ってしまうと、その後のQOL(生活の質)に大きな影響を残してしまうことになります。また、胃や肝臓、十二指腸などに囲まれた奥深い場所にあるため、手術なども大変難しいものになり、予後も食事制限やインスリンの自己注射など、それまでと異なる日常を余儀なくされることになります。
そのため、普段から膵臓に負担をかけないような生活を送るとともに、少しでも不調を感じた場合には、すぐに専門医に相談し、膵臓の健康を維持していくことが大切です。

主な膵臓の病気

膵炎

みぞおちをおさえる男性

文字通り膵臓が炎症を起こしている状態が膵炎です。膵炎は急性のものと慢性のものに分けられます。
急性膵炎は、急激に膵臓に炎症が起こるもので、原因の多くは飲酒と胆石、脂肪分の摂り過ぎなどです。みぞおちから背中にかけて非常に激しい痛みが生じ、吐き気・嘔吐などを伴い、また発熱などの全身症状も現れます。
治療は一定期間の絶飲食によって膵臓を休ませ、その間は輸液によって栄養や水分を確保します。激しい腹痛に対しては、鎮痛薬、また膵液の活性化を抑えるためのお薬などの薬物療法を試みます。
重症の場合、集中治療が必要となるため、入院が必要で、適切な治療が行われない場合、死に至ることもあります。
組織の壊死などがおこった場合、壊死した組織が感染してしまうケースもあり、その部分を摘出する必要があります。近年では内視鏡的な治療が一般的になっていますが、場合によっては外科的手術となることもあります。
膵臓は胃と肝臓に囲まれた深い部分にある臓器で、外科的治療は大変難しいとされています。そのため日ごろから飲酒を控えることや、脂質の摂り過ぎなどに注意をして膵臓を働きすぎないようにケアしていくことも大切です。

慢性膵炎

お腹をおさえる女性

慢性的に膵臓に炎症が起こっている状態です。原因は男性の場合飲酒が最大の原因ですが、女性の場合は原因がはっきりしないものも多くなっています。
慢性膵炎では、膵臓の細胞が徐々に変化し、繊維化していきます。また炎症によって膵液の通り道である膵管が狭窄し、膵液の流れがうっ滞するようになります。
初期のうちは、まだ膵液の流れが確保できているため、腹痛を感じる程度ですが、だんだん進行するに従い、膵臓の機能が低下していき、食べ物の消化ができなくなることや、血糖のコントロールができなくなることがあります。それによって、消化不良からくる体重減少、下痢、糖尿病の発症または悪化など、様々な症状や合併症が現れるようになります。
膵炎が慢性化すると、膵臓の機能が低下して、石灰化します。また、膵液の通り道である“膵管”が細くなったり、膵管のなかに“膵石”ができたりし、ご飯を食べるだけで痛みが生じるようになります。
治療はまず禁酒・禁煙を行い、薬物治療によって膵臓を休ませます。膵管の狭窄が激しい場合は内視鏡的に膵管を拡げる処置を行いますが、状態が悪い場合は外科的手術を検討することもあります。

膵のう胞

膵のう胞は、膵臓の中に液体が溜まった袋状の部分ができる疾患です。膵炎などによって膵臓の組織が壊されて、その部分に液体がたまる良性のものと、膵管の中に粘液を分泌する腫瘍ができて、膵管がつまってしまう腫瘍性のものがありますが、いずれも稀な病気です。
特に症状はなく、健康診断や医療機関にかかったときに、腹部超音波検査や腹部CT検査などを受けて発見されることが多くなっています。
膵のう胞が見つかった場合は、その後定期的に超音波検査などで経過観察を行うことになりますが、のう胞の大きさによっては、がん化のおそれもあり、手術を検討することになります。

膵臓がん

レントゲン検査

膵臓にできるがんで、多くは膵管に発症します。早期にはほとんど自覚症状がありませんが、進行すると、腹痛やお腹の張り、黄疸などが現れます。また突然糖尿病を発症したり、悪化したりすることもあります。膵臓がんは10万人あたり35人弱と罹患者数がそれほど多いがんではありません。また罹患者数の男女差もほとんどありません。
膵臓がんは早期に自覚症状が現れない上、肝臓やリンパ節など近くの組織に転移しやすい性質がありますので、発見された時にはかなり進行してしまっているケースが多くなっています。
血液検査でアミラーゼやエラスターゼ1などの膵臓がつくりだす酵素、膵臓がんの腫瘍マーカーなどを調べ、異常な数値を示すときは、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査などを行うことになります。
治療は進行状態などにあわせて、手術、化学療法、放射線療法、薬物療法などから適切なものを選択することになります。
膵臓がんが疑われる場合は、当院と連携する高度医療機関を紹介して、スムーズに治療を受けることができるようにしています。

膵臓の検査

超音波検査まずは血液検査で膵臓が分泌している酵素などの数値を確認し、また腹部超音波検査で膵臓の状態を画像化して確認します。
なんらかの疾患が疑われる場合には、CT検査やMRI検査などを行います。これらの検査が必要な場合は、連携する高度医療機関を紹介して検査を受けていただくことになります。

超音波検査について