ドクターズコラム

2016.09.26

消化管のがんで命を落とさないためには

最新のがん統計では男性では40歳以上で消化器系のがん(胃・大腸・肝臓)の罹患が多く、70歳以上ではその割合は減少し、前立腺がんと肺がんの割合が増加しており、女性では40歳代では乳がん、子宮がん、卵巣がんの罹患が多く、70歳以上ではその割合は減少し消化器系のがん(胃・大腸・肝臓)と肺がんの割合が増加していることが示されています。
消化器領域疾患では、がんの占める割合が多い現状があります。
その中で消化管のがんは内視鏡で直接観察することができるので、検査さえすれば早期発見しやすい臓器といえると思います。

1、 頭頚部がん・食道がん

 日本人の食道がんは扁平上皮がんというタイプのがんが多く、飲酒や喫煙との関係性が指摘されています。特にお酒を飲んだとき赤くなる(Flushing)体質の方が習慣的飲酒すると食道扁平上皮癌だけでなく頭頚部がん(口腔、喉頭、咽頭)の発生が多くなることが知られています。このフラッシングという現象はアルコールが十分に分解できず中間産物であるアセトアルデヒドの蓄積が引き金になっているといわれていますが、同時に扁平上皮がん発生の引き金となります。節酒・禁酒、禁煙が望ましいですが、これらリスクの高い生活習慣がある方の検査では特に注意して下咽頭と食道を観察しています。この領域のがんであっても、早期に発見すれば治癒は十分に期待できます。

2、 胃がん

 胃がんの発生については多くの研究が行われており、喫煙や塩分の過剰摂取、野菜・果物との摂取不足などいくつかのリスク要因が指摘されていますが、中でもピロリ菌の持続感染がとても高いリスク要因です。ピロリ菌の除菌により胃がんのリスクが約1/3に低下しますので、当院でも除菌を積極的に行っています。
 ピロリ菌の持続感染により胃は萎縮性胃炎という状態になり、これが胃がんの発生母地となってゆきます。除菌が成功しても、いったん萎縮の進んだ胃が直ちに健全な状態に戻ることはなく生涯未感染の方に比べ約7倍以上のリスクが残るとされています。ピロリ感染のある、もしくは感染があったがん年齢の方では年一回の上部内視鏡検査が早期発見に有効です。

■ ピロリ菌と胃がんの関連

(Uemura N,Okamoto S,et al N Engl J Med 345:784-9,2001. 一部改変)

■ 胃の萎縮と胃がんの関連

PG(萎縮の度合い)が高いほど胃がんの発生率が高いことが知られています。

■ 胃の萎縮およびピロリ菌感染と胃がんの関連

(国立がん研究センター 予防研究グループ ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん罹患との関係HPより抜粋)

なお健診などで指摘される胃ポリープでは、ピロリ菌の感染も、萎縮性胃炎もない方に多く見られる胃底腺ポリープという良性のものが多く、胃底腺ポリープがある胃はすなわち胃がんになりにくいという特徴を持っています。(胃には過形成ポリープや腺腫などほかのポリープができる場合もあるので、どのようなポリープができているのか正確に知っておくことは大切です)

3、 大腸がん

 大腸にできるポリープは胃とは異なり腺腫という腫瘍性のポリープが多くを占めます。大腸がんは腺がんというタイプのがんが多く、ごく一部の場合(de novo typeといいます)を除けばこの大腸腺腫が悪性化して発症します。したがって悪性化する前の段階、腺腫のうちに切除してしまうことで大腸がんの予防が可能となります。当院ではその場で切除可能なポリープに関しては日帰り手術を行なっております。(ただし出血のリスクが高いものや、サイズが大きいなどの理由で外科的切除や粘膜下層剥離術が必要なものなどではがん研病院を初めとする関連病院へ紹介させていただく場合もあります)

ちなみに 2013年にアメリカから88902人を22年間という長期間にわたり、2年おきに大腸内視鏡検査を行って大腸がんの発生率や死亡率を調べた研究の結果、大腸がん死亡を7割ほど減らすことができたとの報告がありました。2年に一回では3割の死亡が避けられなかったという見方もできるかと思いますが、定期的な大腸内視鏡検査、および腺腫の切除が大腸がん死亡を減らすことは間違いなさそうです。

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